従業員が会社のお金を横領した場合の対処方法【元弁護士が解説#6】

「従業員が会社のお金を着服している可能性がある」

そんなとき、会社としてはどのように対応すれば良いのでしょうか?

いきなり解雇すると、「解雇無効」「慰謝料請求される」など法的な問題が発生するリスクがあります。正しい知識を持ち、適切な手順で対応を進めましょう。

今回は従業員が会社のお金を横領している場合の対処方法を解説します。万が一の状況にそなえて、ぜひ知識を獲得しておいてください。

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社員が会社のお金を横領 よくあるパターン

社員が会社のお金を横領する事件は昔も今も多数起こっています。大企業だけではなく中小企業や小規模事業者でも発生する可能性があります。会社経営している以上、横領事件は決して他人事ではありません。

横領でよくあるパターン

社員が会社のお金を横領する場合、どういったパターンが多いのかみてみましょう。

  • 会社の経理担当が管理しているお金を横領
  • 営業担当が商品を横流しして不正に利益を得る
  • レジ打ちのアルバイトやパート従業員がお金を抜き取る

横領行為は、当初は小さな金額から始まってだんだんと大金になっていくケースが多数です。数百万円~数千万円、ときには累計の横領額が1億を超える事例もあります。

動機としては「投資の資金に充てた」「水商売の女性に貢ぐためにお金が必要だった」など、さまざまです。

従業員による横領は「業務上横領罪」になる

従業員が会社のお金を横領した場合「業務上横領罪」が成立します。業務上横領罪とは、業として財産を預かっている人が保管している他人の財産を自分のものにしてしまう罪です。

業務上横領罪の成立要件

業務上横領罪の成立要件は、以下のとおりです。

  • 業務として他人の財産を占有している

何らかの業務として日常的に他人の財産を占有している状況が必要です。会社の経理担当がお金を預かっている場合、営業担当が商品を預かっている場合などが該当します。

財産を占有しているけれども「業務」ではない場合「単純横領罪」が成立します。

  • 所有者にしかできない処分をする

所有者にしか認められない処分をすると横領になります。たとえば「自分の口座に振り込む」「勝手に売却する」「抵当権を設定する」「質入れする」などの行為です。

  • 不法領得の意思を持っている

不法領得の意思とは、「自分のものにしてやろう」という意思です。お金を自分のために使う目的で自分の口座に振り込んだり、預金口座から出金して現金を持ち帰ったりすると不法領得の意思が認められます。一方、会社のお金を間違った口座へ誤振込してしまった場合などには不法領得の意思がないので、横領になりません。

業務上横領罪の刑罰

業務上横領罪が成立すると「10年以下の懲役刑」が適用されます(刑法253条)。横領額が高額な場合には、初犯でも実刑になる重い犯罪です。

従業員による横領が発覚したときの対処の流れ

社内で従業員による横領が発覚したら、以下のように対処しましょう。

自宅待機命令を出す

まずは当該社員に対し、自宅待機命令を出すのが良いでしょう。出勤を認めると、横領が繰り返されたり他の社員と口裏合わせされたりするおそれがあります。

調査を行う

横領が発覚しても、いきなり本人を解雇してはなりません。まずは調査を行い、詳細な状況を把握しましょう。必要なのは、以下の4点に関する調査です。

  • 実際に横領が行われたのか確認する

本当に横領が行われたかどうかを明らかにしなければなりません。決めつけによって解雇や損害賠償請求をすると、企業側が「名誉毀損」となったり「解雇無効」とされて慰謝料請求を受けたりするおそれもあります。

  • 横領が行われた実態を把握する

どういった状況で横領行為が行われたのか、明らかにしましょう。

  • 横領の証拠を入手する

従業員へ責任追及するにも解雇するにも、実際に横領が行われていた証拠が必要です。出納帳、入金や出金の記録などの証拠を集めましょう。

  • 横領期間、横領額を明らかにする

具体的に何年の間にいくらのお金が横領されたのかも明らかにしましょう。横領額によってもその後の対応が変わってくる可能性があります。

横領に関する事実を「書面化」する

横領の事実が明らかになったら、書面化しましょう。具体的には従業員本人に以下の内容を認めた書面を作成させてください。

  • 横領を認める
  • 横領した金額を明らかにする
  • 横領額を返還する約束をする

「念書」「確認書」などの名目で上記3点を盛り込んで日付を入れて署名押印させ、企業側へ差し入れさせると良いでしょう。書面があれば、後にもめたときの「証拠」としても使えます。

懲戒処分を検討する

調査の結果、横領行為が確実といえるなら「懲戒処分」を検討しましょう。会社のお金を着服された場合、金額が少額でも懲戒解雇が可能です。

ただし懲戒処分をするには就業規則に懲戒に関する規定をおいておかねばなりません。また本人が否認している場合、充分な証拠を持っていないと後に「解雇無効」と主張されるおそれがあるので、事前にしっかり資料を入手しておきましょう。

損害賠償請求を行う

財産を横領されると、会社には損害が発生します。横領行為は民法上の「不法行為」となるので、会社としては従業員へ「損害賠償請求」が可能です。

調査によって明らかとなった横領額を返還するよう請求しましょう。

刑事告訴を行う

横領行為が悪質な場合や従業員が否認し続けたり損害賠償に応じなかったりする場合には、刑事告訴も検討しましょう。刑事告訴すると、警察が本人を逮捕して刑事裁判になり、刑罰を与えてもらえる可能性があります。

ただ本人に刑事罰を与えてもお金が返ってくるわけではありません。告訴は「相手がどうしてもお金を払わない場合」の最終手段とするのが良いでしょう。

マスコミ対応

社内で横領事件が発生すると、ニュースとなって報道されるケースも少なくありません。その場合、マスコミ対応も必要です。日頃から万が一の際に備えて、社外広報向けに対応マニュアルを作成しておくとよいでしょう。

再発予防措置

すべての対応や処分が済んだら、再発防止措置を検討すべきです。

今回の問題発覚の原因を把握し、除去しましょう。たとえば今まで経理担当が1人だったなら複数人に増やす、異動がなく同じ人が長年担当し続けていたために事件が起こったなら数年ごとに担当者の入れかえを行うなどの対応ができます。

社内に横領事件の経緯を発表し、本人への処分結果なども示して「こういったことは決して行ってはならない」と啓蒙する対応も重要です。

懲戒解雇できる場合とできない場合

従業員による横領行為が発覚しても、必ず解雇できるとは限りません。以下で解雇するための要件をみてみましょう。

横領行為が確実である

まず「横領行為が確実」にならない限り、解雇してはなりません。根拠が不明確なまま懲戒解雇すると、後に「濡れ衣」であった事実が判明して企業側に責任が発生する可能性もあります。間違えて処分すると、他の従業員のモチベーションが下がって離職が発生したり、世間の評判が落ちたりするでしょう。特に本人が否認している場合には、慎重な対応が必要です。必ず綿密に調査を行って証拠を入手してから解雇しましょう。

就業規則に懲戒解雇の規定がある

懲戒解雇するには「就業規則に懲戒解雇に関する規定」をもうけておかねばなりません。

就業規則なしには懲戒処分できないので注意しましょう。小規模事業所でも、万一に備えて就業規則を作成し、労基署へ提出しておくようオススメします。

懲戒解雇が相当である

懲戒解雇するには「従業員による問題行動が解雇に相当する」ことが必要です。問題行動があっても解雇するほど重大でなければ懲戒解雇は認められません。

いろいろな不祥事の中でも「横領事件」は背信性が高いので、横領額が比較的少額(10万円程度)でも解雇が有効となりやすい傾向があります。特に支店長や役員など地位の高い人が横領すると、解雇が認められるケースが多いでしょう。

解雇予告手当について

懲戒解雇する際にも、基本的には「解雇予告または解雇予告手当」が必要です。

解雇予告とは、解雇の30日前に対象者へ通知することです。

解雇予告手当とは、30日に足りないときに不足日数分の給与を支給する手当です。

解雇予告や解雇予告手当の支給をしないと、労働基準法違反となってしまうので注意しましょう。

ただし懲戒解雇の場合、事前に労基署へ申請して「除外認定」を受けておけば、解雇予告手当の支払いが不要となります。除外認定の手続きには数週間程度かかるので、懲戒解雇を検討しているなら早めに申請しましょう。

退職金について

世間では、懲戒解雇すると、退職金の支給が不要となると考えられているものです。ただ法律的には必ずしも全額不支給にできるとは限りません。

退職金を不支給にできるのは「従業員の背信行為がこれまでの貢献をすべて無に帰してしまうほど重大な場合」のみです。以下のような要素を総合的に考慮して判断しましょう。

  • 勤続年数
  • これまでの働きぶり
  • 横領が行われた期間
  • 横領された金額
  • 行為の悪質性

損害賠償の手順

従業員が会社のお金を横領したなら、損害賠償請求を行って返還させるべきです。以下の手順で賠償請求を進めましょう。

対象者へ損害賠償請求の通知をする

まずは本人へ損害賠償請求の通知をします。相手が不誠実な場合には、内容証明郵便を使って請求するとプレッシャーを与えられるでしょう。

話し合う

従業員と話し合い、返還額や支払方法を決めます。横領額が多額な場合、一括で払えないため数年かけて分割払いにする方法も検討しましょう。

合意書を作成する

合意ができたら「合意書」を作成しましょう。特に分割払いになる場合には「公正証書」にしておくようお勧めします。公正証書があれば、支払を起こったときにすぐに預貯金や保険、給料などを差押えられて不払いを防ぎやすくなるからです。

損害賠償請求訴訟を起こす

話し合っても合意できないときや相手が頑なに支払を拒絶する場合には、裁判によって請求するしかありません。調査によって集めた資料をもとに損害賠償請求を行いましょう。

裁判できちんと法的な主張と立証ができれば、相手が否認していても裁判所が横領金の返還命令を出してくれます。その際には「遅延損害金」も足されるので、もともとの横領金額より大きな金額の支払いが命じられます。

訴訟を行うときには専門的な対応が必要になるので、必ず弁護士に依頼しましょう。

まとめ

従業員の横領事件が発覚したら、再発防止のためにも厳しい対応をとるべきです。まずはしっかり調査を行い、結果に応じて懲戒解雇や損害賠償請求の手続きを進めましょう。解雇予告手当や退職金、ときには刑事告訴への対応も必要です。

自社の手に余る場合、弁護士に相談してみてください。

執筆者プロフィール

福谷陽子
法律ライター 元弁護士
弁護士としての経験は約10年。その経験をもとに、ライターへ転身後は法律や不動産関係の記事を積極的に執筆している。
弁護士時代は中小企業の顧問業、離婚や不倫など男女関係案件の取扱いが多く、浮気調査や探偵事務所の実情にも詳しい。
記事の作成だけではなく、編集やサイト設計、ディレクションやウェブコンテンツを利用したマーケティングのアドバイスなど、活動の幅を広げている。

運営サイト(元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog)
https://legalharuka.com/433

運営youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC-vYz7An9GHWXsXjWKbmRdw

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探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

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