ユニオンとは?合同労組から団体交渉を求められたときの対処方法【元弁護士が解説#16】
●従業員を解雇したら、突然知らない「ユニオン」から団体交渉を申し入れられた
●「ユニオン」とは何なのか?団体交渉に対応しなければならないのか?
●不利益を避けるにはどうすれば良いのか?
企業と労働者との間でトラブルが発生すると、ある日突然「ユニオン」から団体交渉の申し入れをされるケースが増えています。
ユニオンは「合同労組」という労働組合の1種です。
ユニオンからの団体交渉申し入れを受けたら、理由なく拒絶してはなりません。
不用意な対応をすると多大な不利益が降りかかる可能性があるので、正しい対処方法を把握しておきましょう。
今回はユニオンとはどういった組織なのか、ユニオンから団体交渉を申し入れられたらどう対応すれば良いのか、解説します。
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ユニオンとは
そもそも「ユニオン」が何かわからないために、団体交渉申し入れを受けて困惑してしまう方が少なくありません。
「知らないユニオンから団体交渉を求められても対応しなくて良いのでは?」と考える人もいますので、まずは「ユニオンとは何か」確認しましょう。
ユニオンとは、複数の企業に勤める労働者を受け入れる労働組合です。同業種の労働者が集まるもの、地域の労働者を受け入れるものなど全国にさまざまなユニオンがあります。
従来「労働組合」というと1つの企業内の組織であり、その企業の労働者しか加盟しないケースが多数でした。しかし最近では、企業の枠を超えてたくさんの労働者を受け入れる「ユニオン」が増えています。中には「全国誰でも加入できるユニオン」もあり、企業間の垣根が低くなっているといえるでしょう。
ユニオンも法的な「労働組合」の1種ですので「労働組合法」が適用されます。
ユニオンから団体交渉を申し込まれたら、企業は法律に従った対応をしなければなりませン。
団体交渉を拒絶すると違法
労働組合法によると、企業が労働組合から団体交渉を申し入れられたとき、正当な理由なく拒絶してはなりません(労働組合法7条2項)。
拒絶すると労働組合側に「救済申し立て」をされて、労働委員会から改善命令を出される可能性があります。
訴訟をされるリスクも発生するので、不用意に拒否しないようにしましょう。
コロナを理由に団体交渉を拒絶できるのか
最近では、コロナ感染を恐れて団体交渉を拒絶したいと考える企業が増えています。
確かに団体交渉を行うと「三密」になりがちなので、団体交渉を避けたい考えには一理あります。
ただ団体交渉は労働組合に認められる法的な権利なので、完全に拒否すると違法となる可能性が高くなります。「コロナが発生しているので、団体交渉には応じられない」と無下に拒絶するのは危険といえるでしょう。
空気の循環や換気を良くする、出席者を減らす、ソーシャルディスタンスを確保するなどして、団体交渉を実施する方向で回答してください。
オンライン団体交渉について
最近では、コロナ対策として「オンライン団体交渉」を実施する例もみられます。ZOOMなどのオンライン会議を利用して団体交渉を行う方法です。
労働組合側が了承するなら、オンラインで団体交渉をしてもかまいません。コロナ禍の中、感染を防ぐためにオンラインで団体交渉を行うことには充分な合理性があるといえます。
まずはオンライン団体交渉の必要性を強調して労働組合側を説得し、資料を事前に送付するなどの工夫を凝らし、可能な限りオンラインで団体交渉を実施しましょう。
なお労働組合側が拒否する場合に企業側がオンライン団体交渉を強要すると、問題があります。対応に迷ったときには労働問題に詳しい弁護士に相談してみてください。
ユニオンから団体交渉を求められたとき、やってはいけないこと
ユニオンから団体交渉を求められたとき、やってはいけないことがいくつかあります。
ユニオンの事務所で団体交渉を実施する
ユニオン側は、ユニオンの事務所内で団体交渉を実施しようとするケースがよくあります。
しかしユニオンの事務所は「ユニオンの支配領域」です。そんな場所で交渉をすると、ユニオン側が有利となり企業側が不利になる可能性が極めて高くなるでしょう。ユニオン側の出席者が多数となり、人数的な格差が発生するリスクも懸念されます。
ユニオン側の事務所では団体交渉をせず、どこかの施設を借りるか、自社内の開いている場所で実施しましょう。
就業時間中に団体交渉する
多くのケースにおいて、ユニオンは「就業時間中」の団体交渉を希望します。
しかし就業時間は労働契約によって労働者が「はたらくべき時間」です。団体交渉にあてる必要はありません。就業時間外に交渉を実施するよう提案しましょう。
どうしても就業時間に団体交渉をするなら、その時間の賃金をカットしてかまいません。
団体交渉の場で書類に署名押印する
ユニオンと団体交渉を行うと、その場で書面への署名押印やサインを求めてくるケースが多々あります。
しかし内容のよくわからない書面には、絶対に署名押印してはなりません。
不用意に署名押印すると、後にユニオン側が「労働協約が成立した」などと言い出して、さまざまな要求を押しつけてくる可能性があります。
ユニオン側が署名押印を求めるときには、「署名押印しないと不当労働行為になる」といって強い勢いで迫ってくるケースがあります。しかし労働協約への署名押印を拒絶しても労働組合法違反にはならず、不当労働行為ではありません。その場で署名押印せず「持ち帰って検討する」と伝えましょう。
経営に関する重要書類を提出する
団体交渉の際、ユニオンは企業側に対してさまざまな書類を提出するよう要求してくるものです。ときには経理関係などの重要書類を提出するよう求めるケースもあるでしょう。
しかし、ユニオンが要求するからといってすべての書類を提示しなければならないわけではありません。開示しなければならないのは、労働トラブルに関連する範囲の書類に限られます。経営に影響を与えるような機密情報まで、開示する必要はありません。
情報については、必要な範囲で適宜提示すれば充分です。
ユニオンを脱退するよう説得する
ユニオンから団体交渉を申し込まれたら「社員を説得してユニオンを辞めさせれば良い」と考える経営者がおられます。
しかし労働者にたいし「脱退するように」と指示すると、「不当労働行為」となってしまいます。命令はもちろんのこと、やんわり提案しただけでも違法となる可能性があるので、やってはなりません。
そのような言動が明らかになると、ユニオン側に格好の攻撃材料を与えてしまうでしょう。
ユニオンを脱退させることは、考えないでください。
ユニオンから団体交渉を求められたときの対処方法
ユニオンから団体交渉を求められたら、以下のように対応しましょう。
日時を調整する
まずは団体交渉の日時を調整しましょう。
ユニオン側は都合の良い日時を指定してくるものですが、企業側が従う義務はありません。
別の日時を指定しても不当労働行為にはならないのです。
団体交渉には準備も必要です。ある程度先の日にちを設定し、就業規則外で営業に支障の及びにくい時間帯を提案してみてください。
出席者を限定する
団体交渉を行うときには「誰が出席するか」を決めるようお勧めします。
出席者を限定しないと、ユニオン側が大人数を出席させて「数の力」で優位に立とうとしてくるためです。対等に交渉するためには「労働者側」と「企業側」の人数を一致させ、誰が出席するのかもあらかじめ明らかにしましょう。
また経営者が必ず出席しなければならない義務もありません。
経営者が出席すると「つるし上げ」にあったりして不利になったりその場で署名押印させられるリスクも高まります。別の役員や管理職を出席させたり弁護士に代理を依頼したりすると良いでしょう。
事前に要求事項を明らかにして回答を作成
団体交渉に先立って、ユニオン側の要求事項をすべて文書で明らかにさせましょう。
それに対しどのように答えるか、回答を準備して書面化しておくと当日スムーズに答えられます。
記録を残す
団体交渉を行うときには、必ず記録を残しましょう。後に団体交渉の状況が問題となったとき、証拠として使えます。また交渉内容が明らかになるので、継続して交渉を行う際にも役立ちます。録音や録画をして、各回の議事録を作成しましょう。
決裂を恐れない
労働組合側と団体交渉するとき「決裂させてはならない」と考えてしまう方がおられます。
しかし団体交渉が決裂しても、違法ではありません。協議してもどうしても折り合えないのであれば、決裂はやむをえないといえます。誠実に協議に応じたのであれば、不当労働行為にならないので安心しましょう。
ユニオン側は「応じないなら労働委員会に訴える」などと強い勢いで迫り、妥協を求めてくるケースもありますが、おそれる必要はありません。
ただし団体交渉が決裂すると、労働者側がビラを配ったり旗振りをしたりして社内の労働環境へ悪影響が及ぶ可能性があります。また訴訟を起こしてくるケースもあるので、そういったリスクにも配慮しましょう。
対応に迷ったときには弁護士に相談してみてください。
ユニオン関係の社内掲示への対応
自社内の従業員がユニオンに加入すると、社内にユニオン関連の貼り紙や掲示をしたりし始めるケースがあります。すると、他の従業員にも影響を与えてしまうでしょう。ユニオンを通じた団体交渉が増えてしまうリスクも高まります。
ユニオン関係の掲示を要求されたら、拒絶してかまいません。許可していないのに勝手に掲示された場合には、取り外すよう指示しましょう。
一度黙認してしまったら「慣習」となり、いつしか社内に多数のユニオン関係の掲示で溢れてしまうおそれもあります。
当初の段階から厳正に対処してください。
ユニオンから団体交渉を求められたとき、社内のリソースだけで対応するのは不安なものです。困ったときには専門家のサポートを受けましょう。企業法務に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。
執筆者プロフィール
福谷陽子
法律ライター 元弁護士
弁護士としての経験は約10年。その経験をもとに、ライターへ転身後は法律や不動産関係の記事を積極的に執筆している。
弁護士時代は中小企業の顧問業、離婚や不倫など男女関係案件の取扱いが多く、浮気調査や探偵事務所の実情にも詳しい。
記事の作成だけではなく、編集やサイト設計、ディレクションやウェブコンテンツを利用したマーケティングのアドバイスなど、活動の幅を広げている。
運営サイト(元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog)
https://legalharuka.com/433
運営youtubeチャンネル
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探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。